【完】『けったいなひとびと』

さらに。

駿がいた頃には考えられなかった事態だが、異常なぐらい稟議が増えた。

営業部が命令を聞かないので、とにかく結束を図ろうと締め付けたのであるが、

「悪いがこれでは話にならない」

と、次は開発部の研究員が他社へ移ってゆく。

稟議が増え、予算が執行しづらくなって長期の研究がしにくくなったことにあった。

次第に。

社内の雰囲気は悪くなる。

そうしたなか。

さやかの元に護が来たのは、駿がいなくなってから半年以上が過ぎた頃である。

「秀島社長」

「…あなたが来てから、この会社は変わってしまった」

「僕はあなたを何とかしたくてここまで来たんだ」

「それを言われても困るし迷惑なだけだって…何度も伝えたはず」

「君は分かってない」

この会社を建て直す唯一の策がある、と護はさやかの目をじっと見つめた。



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