【完】『けったいなひとびと』

京都支社へ戻った駿は、

「西陣の酒屋を嗣ぐことにしましたので」

と言い、退職願を出した。

支社長は保留にし、

「秀島社長が戻ったら、またお前は秘書室長になれるかも知れへんのやで」

と慰留したが、

「秘書室長の代わりはなんぼでもいてますけど、伊福部酒店の跡継ぎに代わりはいてませんので」

と、スパッと退職してしまったのである。

駿が退職したのをさとみが聞いたのはしばらくしてからで、

「…辞めちゃったんだ」

と言い、舞と二人で新しい秘書室長に誰が来るのかを待つ身になった。

他方で。

堤晴加はというと。

内規に引っ掛かって退職をしたあと、実家の和歌山に戻ってからしばらくして結婚したが、花輪屋の仕事のことはほとんど他人に語らず、そのまま専業主婦になったとの話であった。



< 96 / 128 >

この作品をシェア

pagetop