【完】『けったいなひとびと』

それでも。

さやかが戻ってくると、

「また秀島さんのところで働きたい」

と言って転職し戻って来た社員もいたので、さやかはまず花輪屋の経営を安定させることに意を注いだ。

まず基本的な化粧品の自社開発を復活させ、研究員を呼び戻した。

これによってゆとりが出たのか、ノルマは前より下がったのに売り上げが上がるという現象を起こし、

「花輪屋はやっぱり秀島社長でないと」

と言われるほどの評価を取り戻した。

次に手をつけたのは、江戸時代の資料から当時の化粧品を復原するプロジェクトである。

これはさやかが辞任する前、時代劇オタクの研究員が持ち込んだ企画で、メーカーによる復原は例がなかったため、発表当時は注目を集めたものの、例の騒動で止まったままになっていたのである。

当時の文献をもとに化粧水や紅が復原されると、意外にも江戸文化を研究する海外の大学や、海外の研究所からの依頼が増えた。

これにはさやかも想定外であったようで、

「このシリーズ、受注販売なら進めても問題ないんじゃないかな」

と許可を出し、売れ筋の一つにまで成長させることに成功したのである。



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