全てをこの風に乗せて
赤銅色の記憶
電車の時間の都合から、

この学校の生徒達の登校時間は3種類ある。

朝練のある生徒たち

早めに登校する生徒たち

遅刻ぎりぎりの生徒たち


少し前の俺は朝練組だったが、

最近はたるんでいるのがわかる


今日も遅刻ぎりぎりだ…


「おはよーございますー」

「一樹、何してんの?」

親友は鞄を持っていなかった。


いくらアホでも

鞄くらい持って登校するはずだが……


「お前みたいな遅刻魔捕まえてんだよ!」


失敬なっと怒られた。


「あ、生徒会か」

「そーだよ、まったく」

周りを見ると一樹の他に3人いた。

春といえどまだ肌寒い季節。

外に立って挨拶とか……

「……おつかれ」

「おう、わかるか?この苦労!」

労いたくなくなるテンションに苦笑いする

「いこーぜ!俺も終わりだし!」


いつものように


「勝手に解散していいのかよ」


軽口を叩きながら歩き出し


「ほんとは少し前に解散してんだよ」


下駄箱を開けて


「それなら、いーけど」


いつもの、ように…


「ん?」

ひらり


「龍太、なんか落ちたぞ?」

「え、なんだ?」

俺の下駄箱から落ちたなにかは


「なんだこれ!おまっおまえ!ちょっ」


いつもとは違った。


「一樹、落ち着けって」

「ラブレターって実在したのか!」

「落ち着けって!」

高校生活最後の年になって初めての…!

とは一瞬思ったけれども!

「れ、冷静に…」

一樹じゃなく、自分に言い聞かせた。


落ちてきたその便箋の右下には

小さく羽柴花織と書かれていた。


それを見た瞬間、一樹は

「あー。

ラブレターなんてやっぱ都市伝説だよな!

実在してたらオレが貰わないなんて

おかしーしな!」

でかい声でそう言い放った。


「まだ、可能性あるだろ!」

少しムッとしたから言い返したが


「ナイナイ。ありえ、ない w」

と言われてしまった。



クラスのスピーカーである一樹が

興味をなくしてくれたお陰か

この手紙を他のクラスメイトに

知られることは無かった。



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