桜ノ蕾

ふと目に留まった義長のお墓。
私は吸い寄せられるようにそちらに足を踏み出した。


「お、おい! 一体誰と話してんだよ?! どこ行くんだ!!」


秀の焦った声が聞こえたけど、凄く遠くから聞こえる感じがする。


今、私の耳に響くのは……


『ライ、会いたかったぞ』


お墓の前で立ち止まる。


「誰なの?」

『私のことを忘れたのか?』

「忘れるもなにも貴方のことなんて知らない…し……」


突然激しい頭痛に襲われる。
グラリと視界が歪み、膝から崩れ落ちた。


「っっ! 桜 !!」


駆け寄った秀のお陰で倒れることは避けられた。でも、未だに頭が割れるような痛みは続いている。


「お、おい大丈夫か?!」


秀の声がだんだん遠くなっていく。






ダメ……目開けてられない……



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