桜ノ蕾
ぎりっと歯を食い縛り彼を睨み付け叫んだ。
「貴方のせいでこんなところに来ちゃったんじゃない!」
そう、あの不思議な声のせいでこんなわけのわからないところに来てしまった。
たった一人で……
「帰してよ! 家に……元の時代に返して!!」
帰りたい。
東京に、あの日本に、みんなの元に……
「何を言っているのだ」
「貴方が呼んだからこんなところに来ちゃったんじゃない! 呼んだのなら返し方だってわかるでしょ?!」
彼の服を掴みながら必死に叫んだ。
帰りたい
帰りたい
帰りたい
今私が望んでいることはそれだけなんだと気づく。
「お願いだから家に帰してよ……」
ポロポロと涙が床に落ちていく。
「私はおまえを呼んだ覚えなどない」
ハッキリと彼が言った。
目の前が真っ暗になる。
「う、嘘よ! 貴方が私をライって呼んだのよ!?」
「ライを見たのは助けた時が初めてだ。それより前にお主を見た覚えがない」
「そんな……」