桜ノ蕾

は、林?!


「えっ、林ってあそこですよね?」

「この近くに林は一つしかありませんよ」


い、行けるわけないよ!!

林に行ったら殿に会う可能性がある。
正直今会ったら泣いてまた何を言ってしまうか自分でも分からない。
これ以上彼を傷つけてしまうことは絶対にしたくない。


「あの――」

「今日は手が空いている者がいないのです。蕾様にこのような事を頼むのは忍びないのですがどうかお願いします」


断ろうとしたが、百合さんに言葉を重ねられ防がれてしまった。


「だ、だから――」

「近々重臣の方々がこちらに来られるようなのですが、ヨモギが足りなく困っているのです。殿もよもぎ餅がお好きなようで是非お作りしたいと思っているのです」


頬を赤らめながら百合さんは言った。


瞬間、ドロドロとした感情が沸き上がった。

どうして百合さんが殿のために作るなんて言うのよ。
百合さんは彼とは何もないはずでしょ?
それともあの後二人は付き合いだしたとか?



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