あなただけだった
『直也!?今の誰??』


『今の?今のはねぇ…俺の奥さん。』



観念したかのように直也が言う。



『はっ!?奥さん!?結婚してたの?』



『うん…。してた…。』



『してたじゃないよ!奥さんに申し訳ないでしょ!私達は何の関係もありませんってちゃんと謝っといてよ!じゃあね!』



直也の返事を聞く間もなくユカコは電話を切った。



すぐに直也のメモリーを消去する。


一瞬、躊躇したが幼い頃から母子家庭で育ったユカコは人の家庭に踏み入る事はできなかった。


私、浮気相手だったんだ…


そう思うと同時に直也に初めて腹が立った。



喉の奥から込み上げるものがあり、ユカコの目からは大きな雫が溢れ出て頬を濡らす。


直也は私じゃない人を選んだ。これは紛れも無い事実。


この現実を受け入れなければ…。




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