小さな村の大きな話
りんちゃんは僕にとって初めての患者さんだった。



「あのさ、壱原くん。この子なんだけど…」



彼は院内学級の小田先生だ。



「本田さん??どうしたんですか??」


「なんか、院内学級で浮いてるらしくて」


「…そんなことあるんですか??」


「院内学級は少人数だし学年もバラバラ。こういう事は起こりにくいんだけどね…」


「ですよね??」


「初等クラスの時…。
お母さんの事でちょっとね。
……彼女のお母さん、芸能人なんだよ。佐々木らんって知らない??」


「すみません、知らないです」



僕の家は両親の意向でTVのたぐいは全くと言っていいほど見てこなかった。
当時は就職してたけど実家暮らしだったからこういう世間事には疎かった。



「パリコレにも出てたし、当時はママさんモデルとして、メディアの露出も激しかった」


「でも、親は親です」


「それが子供にはわからないんだよ。
クラスメイトも最初は誰も知らなかったんだ。
もともと内気な子だったから自分から話す機会もなかったんだろうけど…。
だけど、芸能人が授業参観で突然やってきたら驚くよね。周りの大人も驚いちゃって。
普段お見舞いにも来てなかったし」



芸能人ってどんなものか、感覚が薄くて正直よくわからないけど。



「…それで、母子ともに浮いちゃったって訳」


「そうだったんですね。
少し、注意してみてみます。周りに話せる人が誰もいないのは辛いですから…」



初めて僕が担当する子。
だからかも知れないけど結構思い入れも強かった。



「出来るだけのことはやっていこうと思います」


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