癒し恋~優しく包まれて~
言われて、また涙が出ていたことに気付く。涙腺はまだ緩んでいたようだ。


「すみません。たかが失恋で、泣いてばかりいて」

「いや、たかがじゃないでしょ? 三上さんの大事な気持ちだったんだから、そう簡単に気持ちが落ち着かないのも当然だよね。ごめんな、無神経な聞き方しちゃって」


入江さんは頬から離した手を今度は私の頭に持っていき、優しく撫でてくれた。

泣いているのを撫でて宥められるなんて、子供のとき以来。なんだか気恥ずかしいけど、優しさが心に染みていく。

私は小さく首を横に振ってから、食べることを再開した。優しい味の雑炊に優しい言葉と優しい手に傷付いた心が癒されていきそう。


「ありがとうございます」


泣いて心配ばかりかけてはいられない。完全に癒されるには時間がかかるだろうけど、前を向いていかないと。

カズさんへの想いは過去のものにしよう。


「失恋から立ち直るには新しい恋をするといいと言うよね」

「ああ、そうですね。新しい恋……出来るようになりたいです」

「なんなら、俺とする?」

「えっ?」
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