癒し恋~優しく包まれて~
今夜、私の11年間の想い人であるカズさんは一人で来なかった。私に紹介するために彼女を連れてきた。

そういうことは前もって言ってくれないと困る。


不意打ちに紹介されて「おめでとう」と一応返したけど、笑顔で言えなかった。笑えるわけがない。好きな人の結婚を心から祝福できない。

私はそこまで大人になれない。

俯くと我慢していた涙がポタポタと真紅色のワンピースに落ち、そこの色を変えていく。

泣いても喚いても、カズさんは私のものにならない。どんなに頑張ってももう無駄だ。

11年の私の想いは無駄なものだった。

片想いでもいいと想い続けていたけど、やっぱり両想いになりたかった。


「三上さん……だよな? どうした?」

「あ、入江さん……」


突然聞こえた自分の名前に顔をあげる。そこには見知った顔があった。


私は『コロアールマーケティング株式会社』の販売戦略部企画課に勤務していて、今声を掛けてきた人物は同じ課の入江俊也(いりえとしや)さんだった。

うちの課はさらに二つのグループに分かれていて、入江さんは私とは違うグループのリーダーをしている。
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