癒し恋~優しく包まれて~
付き合ってもいない人にキスをさせる隙など見せたこともない。私のガードは瑠美も呆れるくらい固かった。

だから、瑠美が驚くのも当然かもしれない。自分でも驚いているから。

さて、前向きに考えると決めたけど、具体的にはどうしたらいいかな……そんなことを考えながら、瑠美と別れて駅のホームで電車を待つ。


あれ? 入江さん?

反対側のホームを見ると、そこに今私の脳内の大部分を占めている人の姿があった。

だけど、入江さんは一人ではない。隣には女性がいた。午後から予定があると言っていたけど、その人とだったのかな。

それにしても、二人の距離の近すぎるように見える。女性が入江さんの腕に自分の腕を絡めている。二人はどんな関係なんだろう。

入江さんは私を好きだと言ってくれた。私にキスをしてくれた。それは今日の朝の出来事だ。

でも、もしかして私は騙されたのかな? 遊ばれていたのかな?

入江さんの優しい言葉と笑顔に疑問を抱かなかったけれど、よく考えればあんなに優してくるのはおかしいのかもしれない。

モヤモヤする気分のまま、私は来た電車に乗る。入江さんは私の姿に気付くことなく会話を楽しんでいた。
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