【完】もっとちょうだい。
そんな歪んだ視界に、
入ったのは、息をきらせたヤヨ。



「……芙祐、」


何か言いかけたヤヨに重なるように声を出した。


「あたしは、もう帰る。勉強する」


涙を指先で拭ってから


ヤヨの横を通り過ぎる。



元カノと一緒に
初もうでのつづきでもすればいい。


そんなに麻里奈ちゃんを優先したいなら、
ずーっと一緒にいれば。



「麻里奈、先帰ってて!」


馬鹿ヤヨの声。



人混みの中に入ったあたしの手
ぎゅっとつかんだヤヨ。


それを振り払って、あたしは先へ進む。



でもやっぱりすぐに追いつかれて

今度は、握る手の力が、
ものすごく強くて、いくら払っても離れない。



「……芙祐!待って!」


「離して。……裏切り者!」


人混みから抜けたところで、
きっと、ヤヨを睨んだ。


でも涙がぽろぽろ落ちて、
かっこつかない。



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