【完】もっとちょうだい。

彼氏と元カレ(SIDE芙祐)


SIDE 芙祐

***

慶太くんに背を押されてから
理数科の教室まで歩く。速足で。

その間も頭の中で
さっきの慶太くんの言葉がこだまする。


”大好きだからだよ”


ぎゅうっと胸の奥が苦しくなる。


よく知ってる、懐かしい
慶太くんの表情だった。


あたしのことを
”好きだ”って言っているみたいな、
優しい顔で……。


……あたしは、慶太くんのあの表情が
すごく好きだった。
愛されてるって、すぐにわかるから。


ヤヨとは全然違う。


歩く速度が緩まっていく。


大好きだけど、手に負えない。
ヤヨなんか……。


ヤヨと別れたとき
最後は絶対笑おうって思った。


”大好きだよ”って
慶太くんがあたしに向けてくれたみたいな
そういう表情を
涙堪えて、もう限界の限界に堪えて
必死でつくった。

だってそしたら、
麻里奈ちゃんみたいに
大事な元カノになれるんじゃないかって、思って。


……それが、”遊びで付き合ってた”ように、みえるなんてね。


足が止まった。


ヤヨのこと大好きだよって。
あたし、何回も言ったのにな……。


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