【完】もっとちょうだい。
藍とリコと三人で靴棚の前に立つ。
理数科の、ヤヨの靴箱の前。

「あ……ない」

抹茶チョコ。なくなってる。
それで、代わりに、
内履きじゃなくて外履きが入ってる。

……ヤヨ、やっと学校来た。

そりゃ来るか。卒業式だもん。

「ここ弥生の?そんなに眺めてどうしたの?」

藍ちゃんが首をかしげる。

「あのね、実はね……」


ふたりにまだ言ってなかったけど、ヤヨと別れたんだ


って言った瞬間のリコの叫び声はね、
先生が駆けつけてくるやつだった。


リコと藍に、慰めと文句を五分五分で貰いながら
階段をのぼる。

「どういう流れで別れたの?」

藍ちゃんが神妙な顔をして聞く。

「詳しくは……放課後?それかおしゃカフェで」

「えぇー今聞きたいのにぃ」

リコちゃんそんなこと言わないで。
わりとね、わりと、
まだ傷は癒えてないんだよ。

「今話したら泣いちゃう」

そう言ったらやっと諦めてくれた。


階段を上りきって、渡り廊下へ進む。


さっき玄関で
胸ポケットにつけてもらった
ピンクの桜、曲がってたから
付けなおしてたら

両隣のリコ藍が立ち止まった。

「え?」と思った時には、
ドンっとひとにぶつかった。


驚いて手元から顔をあげると


「……これって、芙祐?」


抹茶のお菓子かかげた
ヤヨがいた。



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