どんな君でも愛してる
 瑠璃に睨まれたキョウは、"怖い怖い"と降参のポーズをしながらお客のオーダーに答えるため、シェイカーを持った。

 ホールを眺めていたが、内密の仕事をキョウに知られては面倒なため、カウンターに向き直り、シェイカーを振るキョウを観察する。

 彼目当てでくる女性が多いようだ。

 確かに客(特に女性)に対して、物腰柔らかく甘いマスクで、相手を不快にするような話はせず、時に黙って話を聞き、時に相談に対して的確なアドバイスをしたいしている。

 でも、従業員に対して素で接しているようで、先程のようにドキッとするような事を言ったりする。

 オンとオフをしっかし区別出来る人間なのかも知れないそう思っていると、またしても接客が終わったキョウに話しかけられる。

「ルリー。君は誰のスパイなの?」

「はっ?スパイ!?」

 不意に放たれた単語に驚き、少し大きな声を出すと、自分の唇にキョウの人差し指が触れた。

「しー。声が大きいよ。」

 一瞬自分のもうひとつの仕事がばれそうになったのかと、背中に汗をかくのが分かる。

「ごめん!だって、キョウが漫画みたいなこと言うから。」

 
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