どんな君でも愛してる
 急なことで、安東も何日か前に聞きどんな人物なのか分からないと話していたため、不穏な空気を感じすぐにピアニスト相嶋瑠璃について調べたが、ヨーロッパを中心に活動していることしか調べることが出来なかった。

 普通なら経歴や家族構成など、話のネタになりそうなことが出てきそうなのに、出てこないことに、更なる不信感を抱いた。

 何ヵ月たってもスパイにたどり着けずにいたため、響介は彼女に目をつけた。

 情報を仕入れるために、バーテンダーとして素性を隠して働いているのに何の情報も入って来ないところを見ると、もしかしたら新入社員の中に紛れているかも知れないと考えを改め、四月に新入社員と同時にbarに来る相嶋瑠璃をスパイだと仮定することに、響介は決めたのだ。

ー君は誰のスパイなの?ー

 そう質問した時、驚いたような呆れたような顔をしたルリー。

 でもスパイなら演技の練習くらいするだろうと考えた。

ーじゃぁ、キョウがスパイの可能性もあるんだー

 そう切り返したルリーは、キョウからの挑戦状を受け取ったように感じたため、なんとしてでも口を割らせたくて強めな酒を進める。

 そして、黒髪に戻した響介として、この女を口説き落とし、口を割らせてやると闘争心が芽生え、響介は、お酒で潰れたルリーを抱き抱えたのだ。

ー所有権は誰にも渡さない。ー

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