どんな君でも愛してる
裏missionー女に口を割らせる方法ー
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「ねぇ響介。あの子は何も知らないと思うわよ?」

 barの下にあるホテルの一室に、シャワーを浴びたばかりで髪が濡れてバスローブを着、ワイン片手に部屋をうろうろする奏子はの姿があった。

「ちゃんと髪乾かせよ。姉貴。」

 ため息をつきながら、響介はタオルを奏子に渡す。

「だって、私があなたの姉だって知らないんだもの?響介を進められて驚いたわ。」

 姉の奏子はクールビューティーな母親似。

 弟の響介は甘いマスクの父親似。

 一見似ていないが、人を観察しながら心の内を明かさない疑り深い性格はそっくりだ。

「いくら調べても詳しいことが分からないだよ。怪しいだろ?」

「そうだとしても……私はあの子はスパイじゃないと思うわよ。詳しく調べられないだけ。何も知らないだけだと思うわ。」

「だけどなぁ……。」

 響介は、手にあるー報告書ーと書かれてある紙を眺めながら考え込む。その報告書をさっと奏子が奪い取り、音読を始める。

「相嶋瑠璃(アイジマルリ)25歳。中学を卒業後、単身でヨーロッパに渡り音楽の道を極める。得意な楽器はピアノ。本当はバレリーナになる筈が、中学三年の時に、両親と事故にあいプロで踊ることは難しくなったが、命はとりとめた。オーケストラのピアノ契約がきれると共に、B.C. square TOKYO会員制ラウンジのピアニストに採用。」
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