どんな君でも愛してる
『えっ?まさか女と一緒なのか!えっ花嫁候補!!』

 耳もとでぎゃーぎゃーわめく相手に、舌打ちをした。

「ちげーよ。……セフレだよ。」

『えっ?』

 そのセリフを聞いた相手は驚き、布団で寝たふりをしていた瑠璃はさらに驚いてフリーズした。

 その後、まだ二人の会話は続いていたが瑠璃には何も聞こえなかった。もちろん響介は、この会話は聞かれていないと思っているため、時間をおいて、さも今起きたように演じた瑠璃に対して、甘いマスクを向け、"体は大丈夫?"と優しく接してくれた。

 恋人のように一緒に瑠璃が作った朝食をとり、紅茶を飲んだ。響介は、フレックス出勤だからとゆっくりとお風呂に入って身支度をしていた。

 そんな時間を過ごしながら、"好きだよ。""君はセフレだよ。"と、どちらの言葉もなく。だからと言ってお互い関係については何も言わない。

「泊まって、朝御飯までありがとう。」

 部屋を出るときに、ふわっと抱き締められた。

 その時に、初めてエレベーターで助けてくれた時に匂った香りが瑠璃の鼻を掠めた。

 笑顔で部屋を出る響介を、笑顔で見送る瑠璃の姿を、暁めぐみが見ていることは二人とも気がつかなった。

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