どんな君でも愛してる
「会社の金使ってたのはお前か、高萩。情報漏洩もお前か?」

 座り込んだめぐみと浩一の後ろに、仁王立ちし二人を鬼の形相で睨みつけている響介の姿があった。

「二人とも今日中に辞表をかけ!そして、今、少しでも早く立ち去れ!」

 低い声を放った。その声にびくりとし、二人はそそくさに退出していく。一瞬の出来事で、みんな呆気に見ていると、総帥の笑い声が部屋を包んだ。

「いつも飄々としてる君が怒ると、そんな風になるんだね。あ~すっきりした!」

 総帥のこんな笑い声を、今だかつて聞いたことないみんなは、その声に穏やかさを取り戻した。

「……あの、冷蔵庫に、ケーキ入ってたんですけど、お茶にしませんか?」

 瑠璃が目をウサギのように真っ赤にさせ、立ち上がりながら訴えると、和やかな雰囲気のためか、何故かあったかい目で総帥に見つめられ、急に、"おじいちゃん"と呼びたくなり、そう呼ぶと、総帥はすごく嬉しい顔をして喜んでくれた。

 冷蔵庫に向かおうと、立っている響介の横を通り過ぎようとすると、不意に、腕を捕まれ、気がついたら抱き締められていた。

 水曜日に触れあう、いつものグレープフルーツのような、爽やかな香りが、瑠璃の鼻を掠めた。
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