誰かのための物語
第3章 兎

毎年、合宿は標高の高い山間部にある合宿所で行われる。

全国からチームが集まり、秋の全国大会予選に向けた最後の力試しをする場所だ。

周辺には多くのグラウンドがあり、その数は百面以上。

小さな地域のどこでも目につくのが、練習試合だ。


みんな、この地に来るときにはいろんな気持ちを抱えている。


地獄の日々が始まることに憂鬱になっている者。試合が楽しみでしょうがない者。


チームのキャプテンとして自信が持てずにいる者。

怪我をして、試合に出ることができずに悔しい気持ちを抱える者。

この合宿でレギュラーの座を狙っている者。


僕はといえば、チームの一員としてできることを精いっぱいやろうという気持ちだけ。

本当にただ、それだけだった。



< 102 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop