誰かのための物語
それが、ちょうど入院してからもうすぐ一カ月が経過するというときだった。



現実での私は、一カ月間、病院で立樹くんが来るのをずっと待っていた。


しかし、彼は会いにこなかった。

彼が簡単に約束を破ったりするはずがない。


なにか、会いに来られない特別な事情があるんだと思った。


入院生活も初めのうちは

『いつ、立樹くんが会いにきてくれるかな』

とわくわくしていたけれど、その気分もだんだんと落ち込んでいった。


それに伴って、私の病状も悪化した。


病は気から、という言葉があるけれど、それは本当だと思った。


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