誰かのための物語
「日比野って、走るのは好きだろ?」

「えっ……そうだけど、なんでわかるの?」


「姿勢がいいからさ。

体幹がしっかりしてる証拠だよ。

そういう奴って、身体のバランスを取るのがうまいから、長く走れるんだ」


姿勢なんて、自分では意識したことがなかった。


マラソンだけは得意な理由がそんなところにあったなんて。


「サッカーって、走ってなんぼの競技だよ。

強いチームは選手の運動量が圧倒的に多い。

全員で攻めて点を入れたときの喜びはそりゃあもうすごいぞ」

彼は興奮気味に話していた。

「それでな、体幹はサッカー選手にとってすごい重要なんだぜ。

日比野はきっと、守りに向いてると思う。

基礎体力はあるだろうから、練習すれば今からでも全然楽しくやれるはずだよ」

彼はそう言うと、またニカッと歯を見せて笑った。

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