恋人は魔王様
「そう、それは助かる」

立ち上がった私に、ジュノが無邪気な笑みを向けた。

「なんなら、ナギサさんってお呼びしましょうか?」

ディナーに彼女をエスコートしてくれる気の利いた彼氏のように、ふわり、と、手が差し伸べられる。

「結構です!」

私は頭に浮かんだ二時間ドラマに良く出る美人女優を思い浮かべ、ため息をつかずにはいられない。

一体この悪魔は、どれだけ二時間ドラマの探偵になりたかったんだろう……。

テレビの見すぎとは、このことだ。
しかも、ディテールにこだわりすぎだわ、こだわりすぎ。

自分の分だけコーヒー代を支払う。

「えー、つまんないなぁ」

唇を尖らせながらジュノもポケットから財布を取り出し、コーヒー代を支払った。

「でもあれだよね」

喫茶店から出てきたジュノは機嫌よく道を歩きながら言う。

「二時間ドラマの主人公って基本ツンデレだもんね。
このくらいすれ違っていたほうがリアルって話もあるよね」

リアルの定義について、ゆっくり話し合える時間がないのが残念なくらいよ、本当に。

私は言葉を返さない。
ゆっくり振り向くジュノは、腹立たしいほど素敵だが、この際その外見も考慮しないことにして、私も立ち止まる。

二人の間には一歩分の距離があった。

「さぁ、行きましょうか、ナギサさん☆」

私の精一杯の抵抗、つまり無視していることなど歯牙にもかけない様子で、ジュノは、優雅に微笑んで見せた。
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