恋人は魔王様
マドンナ・リリー

私の頭の中で、キョウの声がリフレインしていた。
ベネチアの、眩暈がするほど素敵な景色が一望できる鐘楼の展望台で。
私を抱きしめて囁いた、言葉を。

『ここに来てもまだ、俺のこと想い出せないの?リリー』

あれは、今まであったごたごたを全て差し引いても尚、私の心をぎゅっと締め付けるような、切なさの篭った声だった。

気が遠くなるほど昔から逢いたかった、恋人を想って……?

そして、私がその生まれ変わり……?

考えても、納得できるわけじゃない。
だいたい、御伽噺じゃあるまいし。
私の前世がユリの花?

馬鹿げているにもほどがある。

そもそも、輪廻転生って言う概念は仏教用語でしょう?
何故、それがここに来て、キリスト教と絡んできちゃうわけ?

いくら、日本人の宗教に対する概念が希薄だといっても、あまりにも酷いんじゃないかしら。こういう展開は。


……………

………


でも、あの悪魔が自らを「マリア」と名乗っていたのが、本当に「マドンナ・リリー」に近づきたいから、だとすれば。

やはり。

無視できないことなのかもしれない。




でもね。

今、私の胸が焦げるように痛むのは。
そんなことが受け入れられないから、じゃ、なくて。

本当は――


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