恋人は魔王様
「で、魔王様は次いつ来てくれるの?」

「それが魔界もちょっと面倒なことになってるんです」

「ふうん?」

私は心になんか嫌な予感が浮かび、後退りした。
執事が綺麗な顔でニッコリ笑う。

「心配ですよね?」

あ、こういう人の表情見たことがある。
客にノーと言わせない凄腕営業マンの押しの一手の時の顔だ。
ママに服を売る時や、パパに車を売る時の顔。

「え、ええ。まぁ」

私も残念ながら両親の娘。ノーとは言えず、曖昧に頷いた。

執事はこれぞ悪魔的という魅惑に満ちたあらがえない笑顔を浮かべ、私の手を掴んだ。

執事が何事か呟きパチりと指を鳴らす。


あの風が、私たちを包みこんだ。
私はギュッと瞳を閉じた。

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