恋人は魔王様
「待ってよっ」

慌てて口にした私の声は、驚くほど震えていた。

「こちらですよ、ユリア様。さあ早く」

暗闇の中で何処からともなく響く声は、あまりにも軽くてがっかりする。

「こんなに暗いと分かんないよっ」

途端、くすりと、ゾッとするほど冷たい笑いが耳に入った。

「キョウのお気に入りっていうから、どんな子が来るのかと思ったら小猿じゃない」

意地の悪そうな女の声。

「マリア様、失礼ですがこちらへの立ち入りには許可を得ていただかないと困ります」

困惑した執事の声からは先程までの軽さが微塵もない。


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