恋人は魔王様
「そーゆー子に出会ったことあるの?」

「おや?
気になる?
それって嫉妬?」

からかう声が耳に入る。

「売春宿に売り飛ばされる前の処女を俺が浚って陵辱したっていう昔話でも聞きたい気分?」

……どんな気分だよ、それっ!
多分一生のうちに一度だってそんな気分になるときはないと思われますが?

「そんな気分になる日なんてないと思いますけど?」

「へぇ、じゃあその日が来るのを楽しみにしておこう」



たちの悪い軽口なのか実話なのか見当もつかない。
悪魔だからそのくらいのこと平気でやってるのかもしれないし。
……っていうか、処女を求めるのは悪魔じゃなくて吸血鬼じゃなかったっけ?

とか、冷静に考える余裕なんて、暗闇に置き去りにされ精神的に弱っている私には一ミリも残されてないわけで。

「もう、最低っ。
今すぐおうちに帰してっ」

私の叫び声ごと、荒々しいキスで浚う。

場違いなほど、深く、執拗な口付けに私は息が上がる。


「残念だね、ユリア。
言い訳もお仕置きもまだだから、手放すわけにはいかないな」

低い声が歌うように耳に響いた。

「そうそう。ママにはメールを送っておいたから。
心配しなくて大丈夫だよ」



どこをどう探しても、今の私の心配事ベストスリーにそんなことは入ってなかった。

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