豹変カレシのあまあまな暴走が止まりませんっ!
木嶋さんが、人混みの先を指さした。その向こうに例のスイーツショップがあるらしい。

「それじゃあ、行こうか。早く並ばないと、本当に三時間待ちになっちゃう」

そう言って木嶋さんが、不意に私の手を取った。


って、ええ!? 手繋ぐの!?


驚いた顔をすると、木嶋さんはちょっと困った顔でにっこりと笑った。

「人混み凄いから。水城ちゃん、放って置くとはぐれちゃいそうだし」
「いや、あの――」

私、そんなにフラフラしませんよ? いざはぐれても携帯があるからなんとかなりますよ? それに、方向感覚にはそこそこ自信があるんですよ?

って思ったけど、木嶋さんが前を向いて歩きだしちゃったから、弁解するタイミングを失って、仕方なく手を引かれることにした。

私って、そういうほっとけない系に見えるのかな。
そういえば、玲にもリードつけたいとか言われたっけ。
木嶋さんも、私のこと、厄介な犬の散歩みたいに思ってるのかな。

なんだかちょっと自分が情けなくなってきて、うつむきながら歩いていると。

「水城ちゃんてさ、行列とか耐えられる人?」

急に話を振られて、私は顔を上げる。

「はい。どちらかというと、急かされるよりはダラダラ待っている方が得意ですね」
「よかった。でも今日は、ちゃんと水城ちゃんを飽きさせないように気を付けるから」


そう宣言した木嶋さん。
言葉通り、彼は行列に並ぶ間、ひたすら喋り倒してくれた。
よくもまあ次から次へと話の種が出て来るもんだ。振り上手の聞き上手、さすがは営業さん。

待っているだけの三時間。私は普通に楽しかった。
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