豹変カレシのあまあまな暴走が止まりませんっ!
「ちょっと待って」

私は玲の頬を掴んで、引き剥がした。
玲が、ちょっと驚いた顔できょとんとする。

「とりあえず、夕ご飯、食べよう? 冷めちゃう」

だって目の前に、親子丼とカルボナーラと煮込みハンバーグが並んでるんだよ。
気になってしょうがない。

玲がふっと笑った。
呆れたような、気の抜けたような、安心したような笑顔。

「お前は性欲より食欲だったな」
「だって、性欲は満たされなくても死なないけど、食欲は満たされないと死んじゃうよ?」
「めちゃくちゃな理論だが、間違ってはないな」

玲が私のおでこを小突く。馬鹿め、と言ってどうしようもない笑みを溢す。

「分かった分かった。さっさと食え」


だってさ。せっかく玲が作ってくれたご飯が冷めちゃうなんて、可哀想でしょ。
そりゃあ、ベッドのお誘いはもっと嬉しいけれど。

せっかくなら、食後のデザートにしてくれないかな。


玲が台所へ立って、お箸とスプーンとフォークを持ってきてくれる。
私へ差し出したあと「まったく、お前というやつは」ぶつぶつ文句を垂れながら、私の正面の席へと座る。
嫌そうなのに、嬉しそう。そんな難しい顔で、私を見つめてクスリと笑う。

玲の、そういう素直じゃなくて、気難しくて、面倒くさいところも、なんだか今なら可愛らしく感じられる。

抱きしめたくなった。
親子丼も、カルボナーラも、煮込みハンバーグも、玲も、全部ぜーんぶ大好きだ。

「いただきまーす!」

私が思いっきり親子丼にかぶりつくところを見て、玲はなんだか満足そうに微笑んだ。
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