好きな人は幼馴染み
伊藤に連れ去られた亜子を
黙って目で追っていると


菜摘が俺の腕をガシッと掴むと


「英輔!行くわよ!
遅刻しちゃう!!」



「…ああ」



「ふふふ(笑)何ボーッとしんのよ?
アコか乗り移ったみたいよ?」



「…伊藤って、亜子のなに?」



「亜子はどうあれ、伊藤くんは
亜子が好きなんじゃない?
英輔を見て怒ってたし」



「…そっか、亜子はなんとも思ってないのか…」


ちょっと安心した俺はホッとしたように
言うと


菜摘は俺の顔を探るように見てから
遠くを見つめると



「それはわからない…
でも、アコの気持ちは私にはわかる。
あの子は優しいから言わないだけ…
言わないってわかってて先手を打った私は…」



ささやくような小さな声で言うから
最後の言葉が聞き取れなくて


「ん?」


聞き返すと



「ああ、ううん、こっちの話!!
それより、今日は楽しみにしててよ!」



急に取り繕うように元気になった菜摘は



大人びた綺麗な顔で微笑むと
俺の腕にギュッとしがみついて
歩き出した。



なんなんだ?



菜摘…変なの。

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