きっと、君だけは愛せない
「普通に歩いてもつまらないからさ、ちょっとゲームでもやらないか?」


銀杏並木の終わりが見えてきたころ、ケイが唐突にそんなことを言った。

彼がそんな突拍子もないことを言い出すのは珍しくて、これだけ一緒にいても知らないことはあるものだなあ、としみじみ思った。


「うん、いいね。やろう。何のゲーム?」

「お前、あれ知ってるか。じゃんけんして勝ったら、グリコとかパイナップルとか文字数だけ進めるやつ」

「知ってる。わあ、懐かしいなあ」

「だろ? たまには童心に帰って、な」


なんだかわくわくしてきて、さっそくグーをつくって「じゃーんけーん……」と言ったら、ケイに止められた。


「ちょっと待て」

「え?」

「普通にやってもつまらないから、ちょっとルールを変えよう。じゃんけんはやめて、交代に進むことにして」

「ええ、なにそれ」

「で、進む数はチョコレートとかじゃなくて、そうだなあ」


わけが分からず眉をひそめてケイを見ていると、彼はにやりと笑った。


「じゃあ、交代でお互いの好きなところを言って、その文字数だけ進めるってルールにしよう」

「はあ?」

「先に銀杏並木の端までたどり着いたほうが勝ちな。ミキが俺に勝ったら、ごほうびやるぞ」


まったくよく分からない。


しかも、相手の好きなところを言うって。

恥ずかしすぎるんですが。

一体どうしちゃったんですかケイさん。


唖然としている私をよそに、ケイはすっかりゲームモードだ。


「先攻後攻だけじゃんけんで決めよう。はい、じゃんけん、ぽん」


私がグーで、ケイはチョキ。

勝ってしまった。


「さあミキ、俺の好きなところを言って進め」

「え、え~? 恥ずかし……。もう、しょうがないな」


ケイのことはもちろん好きだけど、面と向かってどこが好きかを言うなんて、非常に恥ずかしい。

でも、ケイがいつになくうきうきしてるから、付き合ってやるか。


「まあ……やさしいところ、かな」

「ほう、どうも。じゃ、かわいいところ」


私が進んだ分だけケイも進み、隣に並んだ。


「……これ、言うのも照れるけど、言われるのも照れるね」

「そこがいいんじゃないか」

「えー? へんなの」


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