もう一度だけでも逢えるなら
 かなでちゃんは、水樹と同じで靴が脱げない。

 土足で私の部屋に上がった。

 ランドセルを肩から降ろすこともできない。

 お菓子や飲み物を出しても意味がない。

「そこに座ってくれるかな」

「はい」

 礼儀正しく返事をしたかなでちゃんは、ランドセルを背負ったまま、リビングの床に座った。

 背筋を正して正座している。物怖じしているように見える。

「私は、水樹おじちゃんと一緒に暮らしている紗優だよ。初めまして、よろしくね」

 水樹が私のことを話していると思うけど、一応、自己紹介。

「初めまして。川中かなでといいます。歳は、七歳です。小学一年生です」
 かなでちゃんは、礼儀正しく自己紹介をしてくれた。

 天使に選ばれたくらいだから、良い子に決まっている。

「水樹おじちゃんとお話があるから、かなでちゃんはテレビを見ててくれるかな」

「はい」

「アニメでいいかな」

「はい。アニメでいいです」

 テレビを点けて、私と水樹はアパートの外に出た。

 水樹がかなでちゃんのことを話してくれた。
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