もう一度だけでも逢えるなら
5 天使のお仕事
 水樹が天使について細かく話してくれた。

 天使の活動内容も話してくれた。

 自分が天使になるまでの経緯、私に出会うまでの経緯も話してくれた。



 天使は亡くなった人の中から選ばれる。誰が選んでいるのかはわからない。

 天使は大昔から存在していて、四年ごとに交代を繰り返し、人から人へとバトンを繋いでいる。

 夢の中のおばあちゃんが言っていたとおり、天使は各町に一人ずつ。その理由は、天使がたくさんいたら、かえって人のためにならないから。

 自分が暮らしていた町の天使にはなれない。家族や友達や知り合いのいる町の天使にもなれない。その理由は、万人に平等に接するため。

 天使は空を飛べない。町と町の境に目には見えない壁があり、他の町にはいけない。水樹は隣町の天使に会ったことがないという。

 天使は実体がないので、着替えができない。靴も履き替えられない。ドアも開けられない。お腹も減らない。喉も渇かない。暑さも寒さも感じない。全く眠くならないとのことで、一日二十四時間起きているという。

 天使は不思議な能力を持っていて、その不思議な能力を使って、自身の管轄する町の人たちのために活動している。

 主な活動は、悪いことをしている人を見かけたら注意する。私のように、道端でお金を拾っても、交番に届けない人。ゴミやタバコのポイ捨てをしている人。優先席を譲らない若者。歩きスマホをしている人。公共マナーの悪い人。

 この他に、困っている人を見かけたら、その人の近くにいる人に、助けてあげてください。とお願いしたりする。急に雨が降ってきた時などに、外に洗濯物を干している家の人に、雨が降ってきたことを知らせる。一生懸命頑張っているのに、なかなか報われない人に、ささやかな幸せをプレゼントする。この他にも、まだまだたくさんあるという。

 ただ、天使の能力は一時的に過ぎず、ほとんどの人は元に戻ってしまう。いくら頑張っても、歩きスマホをする人は減らない。

 天使の活動目的は、人々の心に優しさを呼び込み、思いやりや助け合う心を持ってもらうため、少しだけサポートをする。
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