桜の咲く頃
俊くんに連れられ

私達は懐かしい道を歩いていた


そして着いたのは

あの公園


砂場、ブランコ、シーソー…

昔と変わらない姿でそこにある



この、桜の木も…



桜の木の下までやってくると

俊くんがこっちを向いた


「あの日ここで約束したこと、覚えてる?」


当たり前だよ

忘れた日なんてなかった

ずっとずっと

待ってた



私も俊くんの方を見る

「俊くんが…待っててって言ったんだよ?
忘れる訳ないよ」


その言葉を聴いて

驚いた顔をしてた

でもすぐに照れたように笑っていた


「帰ってくるの、ずっと待ってた。だから、また会えて嬉しい…」

自分で言った言葉なのに

恥ずかしくなって桜に視線を移す


「やっぱり、覚えてないか…」

残念そうに放たれた言葉に

私は驚いて、もう一度俊くんの顔を見る

「え?それって…」




「あの日、もう一つ約束したんだよ」


もう一つ!?

覚えてない

再会を約束したことしか、頭になかった

忘れちゃいけないって思ってたのに

もう一つの方を忘れるなんて…



それってどんな?

そう聴こうとした瞬間

彼の顔が私の顔に近づいてきて

耳元で俊くんが呟いた

私の耳に息がかかる





「俺のお嫁さんになってくれるって約束」





んんんん!!?

おおおお嫁さんんん!!??

私、そんな約束したの!?


恥ずかしさが勝って

顔がどんどん赤くなる

頭の中でドクンっドクンっと脈打つの聞こえる



俊くんは既に体制を戻して私の前にいた

「ほ、本当に…そんな約束したの?」

思わず聞き返していた

別に、疑ってるわけじゃない

でも確認しないと気が済まないような気がして

何か、なんでもいいから話していたかった



その時、彼の笑い声がした

慌てて顔を上げると

「動揺しすぎだよ」

って少年のように笑う俊くんがいた


う、恥ずかしすぎる…!

消えたい……



その時、私の名前が呼ばれた

だけど、前とは違う




「春花」




ちゃん付けじゃない私の名前


ドクンっ

私の心臓がまた大きく音をたてる

いや、もうずっと鳴りっぱなしだ

鳴り止まない

私の心



「俺、春花がこのこと覚えてなくても、そのつもりで帰ってきた」


そのつもりって…

お嫁にするってことだよね?


ってことはこれって…

ぷ、プロポーズ!?


私の頭はまたまた混乱していく

心臓もずっとドキドキいっている

もう、私の心臓もたないよ…




俊くんはまた話し出した
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