桜の咲く頃
『荻田(ハギタ) 俊』

そう名乗った隣の男子


それで確信した


やっぱり俊くんだ…




HRも終わり、それぞれが帰る準備を始めた


今がチャンスだよね?


私は意を決して話しかけた

「俊くん、だよね…?覚えてる?私…」

自分の名前を言おうとしたら

それを相手の声で遮られた



「春花ちゃん」



昔と変わらず、ちゃん付けで呼ばれた私の名前

私の心臓がドクンっと大きく弾む


「うん…!そうだよ。久しぶりだね」

嬉しさのあまり少し声に力がこもる


やっぱり俊くんだった

顔は昔の面影が少し残っている

昔は背丈なんてそんな変わらなかったのにな

見ない間にかっこよくなったね…


「ねぇ、一緒に帰らない?」

俊くんに誘われ一緒に帰ることになった





2人で家までの道を歩く

昔はいつもこうして歩いてた

俊くんが車道側

これは変わらないんだね



「俺のこと、全然気づいてなかったでしょ?」


今さっき気づいたばっかりです…

ごめんなさい!


「ごめん…!さっきまで分からなかった…」

だってもう何年も会ってなかったし

まさか、こういう形で再会すると思ってなかったよ


「だと思った」

俊くんは笑いながらそう言った


「俺はずっと前から気づいてた。あの合格発表の日からずっと…」

え……?

その言葉に驚いた

私が同じ学校にいること分かってたんだ

じゃあなんで今まで声をかけてくれなかったんだろう?


「どうしてもっと早く教えてくれなかったの?」


まだわずかに残る緊張と、恥ずかしさで

火照った顔を隠すように

少し俯いてそう尋ねた




「だって、気づいてほしかったから」



ドクンっ

私の心臓が、また弾む


「え…」

なんて言っていいか分からず声が漏れる

それってどうしてこと?



混乱している頭に俊くんの声が聞こえてきた


「寄り道してもいい?」


私はとりあえず頷き返した


寄り道?

どこに行くんだろう




私の心臓は鳴り止まない



これはただの緊張なの?


ただ恥ずかしいから?


それとも…

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