すきなひと



うーん。
私がそう唸ったときに、

キーンコーンカーンコーン。

無機質なチャイムの音が聞こえてきた。その音が合図になったように、運動部の声が少し小さくなったように思う。下校時刻15分前のチャイムだ。


「満(ミチル)ーっ。解散するよー」


間延びした我らが部長、長島巴(ナガシマトモエ)の声に、私は肩の力を抜いた。そして、巴の方を振り返った。


長い黒髪に、切れ長の瞳。

巴は美人だ、と私は常々思っている。

だけど、性格が少し謎なところがあるからか、男子の注目の的からは外れているようだった。


「じゃ、次の活動は年明けね。みんなお疲れ様〜解散!」
「「お疲れ様でした!!」」


巴の声はなんだか落ち着く。
写真部は1、2年生合わせて15人しかいない。

私たちは、のんびりとした巴のおかげで、のんびりと過ごしている。


私はまとめておいてあった写真部のカバンの山から、自分のリュックを手に取った。
黒色の生地に、白で有名なブランドのロゴがはいった、お気に入りのリュックだ。


よし、と気合いを入れるように、リュックを背負うと、巴が横から私に問う。


「また久野(ヒサノ)のお迎え?」
「あ、うん」


こくりと頷いた。
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