冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
彼は苦しげな表情をする。
でも、彼の言う通りだ。


「それがもし、リリアーヌであれば、イヤールドを草の根一本に至るまで、燃やし尽くすであろう」


彼はそう言いながら、私の首に触れる。


「もう、お前が傷つくのを見たくない」

「シャルヴェさま……」


突然やって来た、ただのじゃじゃ馬をこんなに心配してくれるなんて……。
私は目頭が熱くなるのを感じた。


「避けられぬ戦いもある。そのたびに、お前の心は血だらけになる」


彼は私の首に触れた手をそのまま滑らせ、今度は頬を包み込む。


「リリアーヌにそんな覚悟をさせたくはない。やはり、サノワに帰るがよい」


彼にそう言われた瞬間、私の心の中のなにかが音を立てて大きく動いた。
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