冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
シャルヴェさまの部屋まで行くと、護衛の兵に頭を下げてから、大きなドアをノックした。


「リリアーヌです」

「入れ」


そこでヤニックと別れ、ひとりで中に入った。


「シャルヴェさま、あの……」


窓の外を眺めていた彼は、振り返り私を見つめる。


「昼食はまだだと聞いたが」

「はい」


テーブルには食事が用意されていた。


「ここで一緒に」

「よろしいんですか?」


もう一度、そんな機会を与えられたことに心躍る。
あまり人を寄せ付けたがらないと聞いていた彼が、少しずつ心を開いてくれているようでうれしかった。


「あぁ」


私も手伝ったパンは酵母にも使っている干し葡萄入り。
かぼちゃのスープは滑らかで、鶏肉はシンプルに塩で味付けされていた。


「俺は、民がこの食事を食べられるよう、国を守らねばならぬ」

「はい」


パンに手を付けた彼が突然そう言いだすので驚いた。
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