冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
「ヤニック、ありがとう」

「サノワの皆に伝えます。リリアーヌさまはご立派な王太子妃になられると。それでは」


ヤニックとはこれでお別れだ。

それでも寂しくなかった。
同じ空を見上げながら、同じ志を持ち……心はひとつにつながっている。


「バスチュー、いる?」


それから私はすぐに廊下に出てバスチューを呼んだ。
すると彼は隣の部屋からすぐに出てくる。


こうしてそばで支えてくれる人がいる。
私はそれだけで強くなれた。


「はい。なにか?」

「こうして待っているだけでは時間がもったいない。おそらくケガをする兵が多く出るでしょう。今のうちに薬草を集めて。そして、街の医者に軍が帰還したらすぐに王宮に来るようにと、声をかけておいてください」


バスチューは私の指示に驚いたのか、呆然としている。


「王宮に、ですか?」

「はい。大広間を治療のために開放します。ひとりでも多くの命を救います。そのために連携してください」
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