冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
なぜか声を震わせるコールの目にうっすらと涙が浮かんでいるのを見つけた私は、激しく動揺してしまった。

どうしたの? 
私、そんなにいけないことをした?

すると、シャルヴェが口を開く。


「コールには心配をかけたな」

「とんでもございません。リリアーヌさまは運命のお方。末永く大切になさってください。それでは……」


コールは泣きながらも笑みを作り部屋を出ていく。

ふたりの会話がうまく呑みこめない私が首を傾げると、シャルヴェは私の手を引き、イスに座った自分の膝の上に座らせる。


「コールは今までの女がこの傷を見て逃げ出していくのを何度も目の当たりにしているんだ。自分の夫が傷だらけになり、命を断たれた状態で戻ってきた彼女にとって、俺が拒否されるたびに自分のことのように心を痛めてくれた」

「そうだったんですね……」


コールはシャルヴェのことを心から尊敬しているのだと感じた。


「期待に応えないとな」

「えっ?」

「もっと愛し合って、仲の良いところを見せつけないと」


そしてシャルヴェは、私に深いキスを落とした。
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