一輪の花を君に。
「おぉ、大翔。どうした?」


海の潮風が、美空の綺麗な髪をなびかせている。




「いや、ほら寒いからこれ着てなよ。」




上に羽織っていたコートを、美空の肩にかけた。




「大丈夫なのに。」





そう言いながらも、喜んでくれている美空を見ると、さっき聞いたことが嘘のように思える。





「なあ、体調は?大丈夫なのか?」




気づいたら、そう美空に問い出していた。





大丈夫なはずがないのに。





「大丈夫だよ?」




やっぱりか。




大丈夫って聞いたら、大体の人が大丈夫って答えるよな。




美空の笑顔の裏には、何も触れないでという思いが込められているような気がした。





すると、ギターのケースの上に置いてあった美空の携帯の画面が光った。





「…ごめん、七瀬先生に呼び出されたから先に帰るね。」





「そっか。なら、俺も帰ろうかな。」





「うん。」
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