一輪の花を君に。
この気持ちが、何なのか分からない。




でも、これだけは言える。




私は、中森先生から離れたくない。





「すみません…。



なんでもありません。」






私は、涙を抑えようと必死に自分に大丈夫と言い聞かせた。






「美空、もしかして。」






大翔は、何かを察したかのようにそう口にしていた。








「そっか。」






大翔は、そう言葉にしてから私の頭に手を置いた。





「中森先生?」







「ん?」







「美空が、不安な時やそばにいてほしい時は、俺たちの家に来てくれますか?」







「もちろんだよ。




すぐにでも行く。」









「本当ですか?」







「美空、大丈夫だよ。



美空が、そばにいてほしい時は必ず駆けつけるから。」






中森先生の言葉に、私は安心した。






「美空、後で少し話そうか。」







「はい。」






「私達、席外しますね。」







七瀬先生は、気を使って大翔と廊下に出た。







「先生?」






「どうした?」






「今まで、ありがとうございました。」








「何だよ、もう会えないみたいな言い方して。



会えないわけでは、ないだろう?




美空が、俺に会いたい時は遠慮しないで連絡してほしい。





本当は、俺も美空のそばにずっといたいんだよ。




本当は、一緒に暮らしたい。





だけど、美空が高校を卒業しないとこればかりはできないんだ。





だから、美空?



約束代わりにしか、ならないけど…。」







中森先生は、私の後ろに回り首にピンクゴールドの、可愛いハートのネックレスをつけてくれた。






「先生、これ。」






「忘れないでほしいんだ。




美空の主治医としてじゃなくて、1人の男として美空のことを幸せにしたいんだ。




だから、必ず美空のことを迎えに行く。」







私は、嬉しくて涙が溢れ出していた。





中森先生は、私の涙を優しく拭った。






「泣き虫さんだな、美空は。



可愛い顔が、台無しになるよ?」






「うるさいな。」





中森先生の、冷たい手が私の熱を帯びた瞼に重なり、気持ちがよかった。







「さあ、そろそろ七瀬先生達のところに行こうか。」






「うん。」





中森先生に、支えられながら私は七瀬先生のところに向かった。
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