柏木達也の憂い

「おそらく、だけどね。全体の日当たりを求めてるんじゃなくって、リビングに人が集まる家がいいんじゃないかな。それぞれの部屋に同じ光があたって、別の部屋にいても一体感を感じられる、っていう柏木くんのコンセプトも素敵だけどさ。そうじゃなくって、クライアントが求めてるのは、同じ部屋で過ごす時間じゃないのかな?」

そう言われて、はっとした。

そんなこと考えなかった。ただ、日当たりなんだって。同じ部屋で過ごす時間か。その言葉を、何度か自分で繰り返していると、1つのアイデアが浮かんだ。

早速形にしたい、と図面に向き合おうとしたところで美智子さんの存在を思い出す。じっと俺の様子を見守ってくれていた美智子さんは

「その様子だと、大丈夫そうだね。がんばって」

そう微笑みながら俺の肩に手を置いてデスクを離れていく。その背中に

「ありがとうございます!」

大きな声でお礼を言って、久々にのってきた気分のまま図面に向き合った。

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