柏木達也の憂い
それ以来、煮詰まると美智子さんに相談を持ち掛けるようになった。
その度に
「クライアント自身でも、何が一番大事かわかってないんじゃないかな。そこ、一緒に整理してあげたら?」
とか
「柏木くんのはクライアントとして理想形だろうけど、それに現実を加えてみないと」
決して俺のことを否定せずに、目線を引き上げてくれた。
そして、そんな美智子さんに尊敬以上の憧れを抱くのは、俺にとっては当然だった。
だけど、どうしたら美智子さんとの距離を縮められるのか、そんな淡い気持ちを抱いたまま時が過ぎた。
そんな俺にチャンスが訪れたのは、1つのプロジェクトがおわったチームでの飲み会でのこと。
「またフラれたんだって?」
そうやって美智子さんに絡んでいるのは、美智子さんのことをかわいがっている課長だ。
「うるさいです。こんだけ毎日仕事ばっかりさせる課長のせいでもあるんですよ」
「えー俺のせいにするなよ。男見る目ないんじゃないの?どうせまた、俺と仕事のどっちが大事なんだ、とか言われたんだろ」
そう言いながら笑っている課長を睨みつけている美智子さん。