メガネの王子様

なんか変なんです

金曜日の朝。

私は玄関から一度外に出て、また家の中に入る。

今朝は少し冷えるな…

自分の部屋に戻りブレザーを羽織ってから家を出た。

衣替えは10月なんだけど、まだまだ暑い日もあるからウチの学校では10月はカーディガンでもブレザーでもどちらでもいい期間になっている。

11月からはブレザーに統一されるんだけどね。

もうすぐ11月。

2年生の私達にとって、とても楽しみな行事である修学旅行がある月だ。

親友の陽葵に健ちゃん。

それに私の好きな人…桐生と一緒に修学旅行に行けるだなんて幸せすぎるっ♡

なんて思いながら学校へ行くと、その日のHRは修学旅行の事を決める話だった。

「じゃあ、男女3人ずつの計6人でグループを作れー。決まったら先生の所へ報告にきてくれー。」

先生はそれだけ言って教壇の横にあるパイプ椅子に腰掛けた。

陽葵が私の席に走ってやって来て「萌香は私と一緒だよねっ」と言って私に抱きつく。

「当然じゃんっ。あと女子1人はどうする？」

「うーん、そうだねぇ。」

私と陽葵が教室を見回していたら、健ちゃんと目が合った。

健ちゃんは同じバスケ部で仲の良い斎藤くんと一緒に私達の方へ近づいて来る。

「神崎、陽葵。俺らと組もうぜ。」

「もちろんっ。じゃ、あと1人女子はあの子に決定だね。」

そう言って陽葵は、近くにいた優花(ゆうか)ちゃんの腕を引っ張り連れて来た。

「優花ちゃんと斎藤くんは付き合ってるから、当然セットでしょっ。」

優花ちゃんは真っ赤な顔をしながら「よろしくお願いします」とか細い声で言った。

小柄で大人しくて控え目な優花ちゃんは、女の私から見ても守ってあげたくなるような可愛い子なんだ。

これで女子3人、男子2人か…

あと男子1人は誰になるんだろう？

桐生が同じ班になってくれたら嬉しいんだけど…私からは誘えないし…。

健ちゃんに相談して協力してもらう？

いや、それも恥ずかしいな///

なんて思いながら桐生に視線を向けると、ズンズンと私の方に近づいて来て

「僕もこの班に入れてもらえませんか？」

とても爽やかな笑顔で言った。

「え///⁇」

まさか桐生が自分から私達のグループに入って来ると思わなかった。

ーーっていうかっ、またイケメンオーラが漏れてるってっ///

もうっ！バレちゃったらどうするのよっ！

私が桐生を見上げ睨んでいると、健ちゃんが私の隣に立って桐生と向かい合わせになる。

「いーよ。これで6人決定だな。」

笑顔で答えた健ちゃんだけど、なんだかいつもの笑顔じゃないような気がする。

無理に作ってる？みたいな…

「ありがとうございます。宜しくね、神崎さん。」

ニコッと極上の笑顔で私に右手を差し出した桐生。

だーかーらーっ！バレるでしょーっ！

無防備に笑う桐生に腹が立って、私は差し出された桐生の右手を思いっ切り強く握ってやった。

でも、桐生には全然効かなくて…

「神崎さんの手、小さくて可愛いですね。」

と言って私の手をスッと持ち上げてキスをする。

「な、な、なっっーー///⁉︎」

何やってんのーーっ桐生ーーーっ⁉︎

「何してんだっ！」

健ちゃんが桐生の手をブンッと勢いよく振り払った。

陽葵はニヤニヤと笑ってるし、斎藤くんはポカーンと口を開けてるし、優花ちゃんなんて倒れてしまうんじゃないかと思うくらいに真っ赤になっている。

「まぁ、まぁ、そんな怒らないでよ健人。それにしても、桐生って本当はそんなキャラだったんだね。」

斎藤くんが「宜しく」と言って桐生と握手をしている。

桐生ってば、マジで何やってんの⁇

イケメンが他の人にバレてもいいの？

また、嫌な目に合っちゃうんだよっ。

そんなに無防備な桐生、私、守りきる自信がないよっ。



この後、桐生の行動には驚かされてばかりの日々が続くなんて私は思ってなかったんだ…