甘い媚薬はPoison
静まり返ったオフィス、自席にバッグを置き、パソコンを立ち上げるといつものように給湯室に行きポットのお湯を準備する。
時間があったのでシュシュで髪を結んでコーヒーの在庫もチェックして補充していると、男性の靴音がして声をかけられた。
「あれ、愛梨ちゃん?早いね。おはよう」
振り返れば杉山さんがニコッと笑顔で微笑んでいた。
「おはようございます」
私も笑顔を作って挨拶するが上手くいかなかったのか、杉山さんが心配そうに私の顔を覗き込んでくる。
「愛梨ちゃん、大丈夫?顔色悪いよ」
「昨日酔い潰れてしまって……二日酔いなんです、あはは」
咄嗟に取り繕い笑って誤魔化すが、自分の笑い声が虚しく聞こえた。
「そうなんだ。体調悪そうだし、今日は帰って休んだら?」
「大丈夫です。明日は土曜で休みだし」
杉山さんの気遣いに、私はゆっくりと頭を振った。
「そう?辛かったら無理せず帰るんだよ。あと愛梨ちゃん……」
杉山さんが私に顔を近づけ声を潜める。
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