甘い媚薬はPoison
「妹ね。納得、納得。でも、俺が岸本さんの兄なら、きっとスゲー可愛がると思う」
軽く口笛を吹きながら児玉くんは自分の席に戻っていく。
「ホント、手のかかる妹」
児玉くんの後ろ姿を見送りながら、私は自嘲するように小さく呟いた。
私の体調管理がなってなかったせいで、蓮くんだけでなく会社のみんなにも迷惑をかけてしまった。
私は佐藤さんを責められない。
蓮くんの予定変更で佐藤さんにも多大な迷惑をかけたと思う。
当日予定をキャンセルして、リスケするのは大変だったに違いない。
蓮くんが病気なら仕方ないが、倒れたのは私だし、彼女も納得いかなかったはずだ。
嫌みを言われるのを覚悟して佐藤さんの元へ行く。
今日は朝から蓮くんが出張でいないせいか、彼女はファイルの整理をしていた。
「何か用?そこにいられると邪魔なんだけど」
私の気配に気づくと、彼女は刺々しい言葉を投げてくる。
「金曜日は私のせいでご迷惑をお掛けしてすみませんでした」
佐藤さんに向かって深々と頭を下げる。
だが、私の謝罪が気に入らなかったのか、彼女は片眉を上げた。
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