甘い媚薬はPoison
「あ~、やだ~‼」
頭をブンブン振りながらひとりで騒いでいると、小さくコンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「……はい?」
蓮くんかと思って身構えながら布団にくるまると、ドキドキしながら返事をする。
「愛梨ちゃん、起きてたんだ。おはよう」
部屋に入ってきたのは、蓮くんではなく歩くんだった。
ホッとしたような……がっかりしたような……。
「おはよう。あのう……蓮くんは?」
恐る恐る聞いてみると、歩くんはベッドの端に腰かけてにこやかに答える。
「会社に行ったよ。俺が起きた時にはすでにスーツ着て出かけるとこでさ」
会社……。
「あっ……そう言えば、今何時……‼」
今日が平日であることを思い出して壁時計を見れば、時計の針は十二時三十五分を指していた。
「嘘……お昼過ぎてる?早く会社行かなきゃ」
ベッドから出ようとすると、歩くんに止められた。
「待って。今日は会社休めって兄貴からの伝言」
「でも……昨日の仕事も終わらせてなくて……」
児玉くんに頼まれたコピー、どうしよう~‼
きっと困ってるよね。
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