未来(あした)が来るなら、ずっとそばで笑ってて。

母が「あっ」と叫んで固まった。どうやら完全に忘れていたようだ。



俺はそんな母を尻目にそこを出て、階段を上り咲雪の部屋の隣に位置する自分の部屋に入った。




部屋の隅に置いてあるシングルベッドの横には、壁と向き合う形で俺の愛用のCASIOの電子ピアノが置いてある。


俺は、電子ピアノの前に座った。

スイッチを入れ、ボリュームを絞って適当に鍵盤を押してみる。


ポン……と聞きなれた音。


これぐらいのボリュームなら迷惑にもならないだろう。



俺は、気持ちを落ち着かせたい時や何か考えをまとめたい時はいつもピアノを弾く。


そうすると、いつも決まって自分に今必要なことが見えてくるのだ。


俺は鍵盤に手を伸ばした。

さて、何を弾こうか。


今の気持ちのまま、あるがままに。あるがまま……。



俺はゆっくりとしたテンポで、イントロを弾き始めた。



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